・　この本を読む気になったのは、著者がＭＤであるにもかかわらず治療をせずにカウンセリングで痛みを治していると言う話しに興味を持ったからだ。

・　結論から言わせてもらえば、カウンセリングのみで治ると言っても時間は掛るし、患者の理解と信頼が得られないと効果が上がらない。治ったと言っても、生活環境によっては再発するわけだから治療と言う意味では我々と何ら変わらないと思える。

逆に東洋整体蘇生術をすることで体を弛めることにより心も癒されるので早く痛みが取れる可能性もあると思う。

・　また、著者の思考は、西洋医学の先生でありながら東洋医学っぽい発想で、東洋医学を勉強していれば、ＴＭＳ判定における内容も変わっていたかも知れない。

・　本書は、著者がＴＭＳ（緊張性筋炎症候群）と言う症状を提唱しており、その内容について述べている。

ＴＭＳによる痛みと言うのは、身体の構造異常から起きるのでなく、（怒りのような）抑圧された感情が引き起こしている。

つまり、不快、苦痛、怒りのような抑圧された感情から注意をそらす為に、脳が身体に痛みを与えて、そのことを考えないようにしていると。

したがって、カウンセリングで心が潜在意識の中の抑圧された感情を理解することで体の痛みが不要となって、痛みが消えていくと。逆に心が危機やストレスだらけの状況では、心にいやというほどの苦痛が加わっているので、体の痛みは感じない。

・本書の内容を少しピックアップすると

◎＿ＴＭＳに冒されると、その部位全体が酸素欠乏となるため、筋肉と神経双方に痛みを感じることになる。

◎＿ ＴＭＳの生理的変化は脳から始まる。抑圧された不安や怒りなどの感情が脳内で作用しはじめると、自律神経系がある部分の筋肉や神経、腱、靭帯の血流量を減少させ、

その結果、その部位の組織に痛みやその他の機能障害が起きる。脳が率先して心の問題を処理しようとした結果だ。

◎＿ トリガーポイントによる圧痛を感じるような過敏点は、単に「酸素欠乏の中心部」に過ぎないと考えている。

◎＿ ＴＭＳの症状でも自律神経失調の人が訴える症状と同じ痛みや、しびれ、ヒリヒリ感が言われている。

・　この本で感じたことは、ＴＭＳの症状と類似する症状を明確に分けるのは難しいと言うことだ。

また、アフリカ人は文化的相違であまり不安を抱かないのでＴＭＳは無いとの事で、今回掲載している患者は米国人ではあるが、心の問題から発症するとなると確かに日本人にも適用される。

・　治療法としてはカウンセリングや勉強会、グループミーティングが主で、体の痛みに意識が行かないように、理学療法、整体、カイロなどの施術をやめることを訴えているが、

これらの施術を行うことにより体も弛み、心も癒されるので一概にやめる必要は無いと思う。 そう言う点においては、著者の東洋医学への認識が深ければ治療方法も違っていたのではないかと思う。

・　わたしの治療は話しながら施術することでカウンセリング効果を出し、体の固さと心を和ませるよう心がけているが、思うように体の固さが取れなくても、痛みが消える場合があり、

プラシーボ効果なのか、心の緊張も和らいだせいなのか、ＴＭＳにも関係ありそう。

参考までに、東洋整体蘇生術の独特の押圧法は、神経刺激、エネルギー注入として血流改善による酸素補給を担っているので痛みを取ると言う面では効果が高い。

・　著者は、自律神経系と免疫系を分けて考えているが、わたしは心と自律神経系、自律神経系と免疫系は相互依存があると考えているので、本の内容に於いては少し考え方に違いがある。

・　私の参考になった点を挙げれば、

◎＿ ＴＭＳ治療での、脳に話しかける、ふたたび身体を動かすと言う点で患者へのアドバイスを見直したい。

◎＿ 著者も苦労されているようだが、やはり我々の治療に疑いを持ってくる患者さんに、診断を理論的に納得させるのも我々の仕事であるし、患者さんに我々を信じさせると言う事でなく、学んでもらう事が必要だと実感した。

　しかしながら、症状の見方など参考になる点が多く勉強になった本であった。

平成１９年５月２２日

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