―うつ病、統合失調症、認知症が治る―

著者：田辺　功　話す人：松澤大樹　（発行：西村書店）

本のテーマは、画像で見えるから治ったことがわかる。

・　私は精神科の専門では無いが、整体治療を行う上で思うことは、うつ病、統合失調症、パニック症候群、心身症など、ある意味自律神経失調症と同じ分類の施術で症状の改善が可能だと考えている。

改善の結果については、表情、態度、リスニングに頼っているが、この本ではＭＲＩ画像で改善具合が明確に見ることができると言う画期的な結果が得られていると言うことで、本の紹介も兼ねて概略を記します。

・　今回の発見は、東邦大学名誉教授、松澤大樹先生によるもの。元来うつ病、統合失調症、認知症は別々の病気とされているが、統合失調症とうつ病は同じ病気であること。

認知症は脳の萎縮や、脳梗塞などの脳血管性とは無関係と言うものであり、これらの３つの精神病はＭＲＩ画像から、基本的には脳内の扁桃体の傷が原因であることが分かった。アルツハイマー症には、この扁桃体の傷と、海馬の萎縮が伴っていると言う。

・　上記のことより、脳の傷をふさげばこれらの病は治ることになる。治療には神経幹細胞がポイントとなるが、この細胞は増殖が遅く回復も遅いので、増殖と分化を促すには運動が必要となる。

また、不飽和脂肪酸のアラキドン酸も重要で、豚肉、牛肉、さらに野菜をたくさん食べることも必要とのこと。バナナを食べて走ると、新しい細胞が出現しやすくなり傷をふさいで症状が改善するらしい。詳細は本書をお読み下さい。

・　この本では、「こころ」の故郷と言うことで、症状の原因について述べているが、扁桃体の役割がしっかり理解できる。

かいつまんで記すと、アルツハイマーをはじめ認知症の患者さんは、絶えず空腹を訴えたり、色情的になったり、怒りっぽくなったりするが、飢えや性欲、怒りなどは脳内の視床下部の支配分野で扁桃体がかなりコントロールしている。

扁桃体の隣には側坐核と言う細胞群があり、意思や行動を司るが、これまた感情を司る扁桃体がかなりコントロールしている。

分かり易く言うと、感情の中枢である扁桃体は、記憶の中枢である海馬と意思の中枢である側坐核をコントロールして視床下部と脳幹を通って体をコントロールしている。

扁桃体が壊れて視床下部に向かうと、自殺や殺人などの凶悪犯罪を含む情動障害や、激怒や飢え、性欲の異常、自律神経の失調などが現れる。

・　また、ここでは、脳を活性化し、気持ちを高揚させるドーパミンと、気持ちを穏やかにし、夜には睡眠促進物質のメラトニンに変わるセロトニンのバランスが取れている時に「こころ」が正常だと位置づけている。

そして、ドーパミンが増えてこのバランスが崩れると統合失調症が発現し、セロトニンが増えるとそう病、セロトニンが減ってくるとうつ病を発現すると。

本文を借りれば、近親者の死亡、リストラ、失恋、転勤や昇進などの大きなストレスがセロトニン量を減少させうつ症状へと進み、うつ症状が続くと、扁桃体は膨張し、下方に傷が出来て混合型精神病（うつ病）に進展すると。

・　認知症などは、適切な作業療法や運動療法にて、患者にやる気が出て、患者の前頭連合野が活動し始めると、認知症の症状が消えてくるようだ。

いずれにしても、一番画期的なのは、治療前と治療後でのＭＲＩ画像の比較で、扁桃体の傷が消えることで症状の改善していることが視覚的に判断できること。また、この傷を消すための療法が述べられていることである。

私の記載では分かり難いと思いますが、興味をもたれた方は是非購読してみて下さい。

平成２１年１０月９日

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